口腔内スキャナーとは?負担の少ない歯型取りへ|Medit i600を導入しました

井上歯科クリニック学芸大では、患者様の負担をできるだけ抑え、より分かりやすく精度に配慮した歯科治療をご提供するため、口腔内スキャナー「Medit i600(メディット・アイ600)」を導入しました。

「口腔内スキャナーと言われても、何をする機械なのか分からない」という患者様も多いと思います。

そこで今回は、口腔内スキャナーとはどのような機器なのか、従来の歯型取りと何が違うのか、痛みや治療期間、費用、メリット・デメリットについて分かりやすくご説明します。

口腔内スキャナーとは?負担の少ない歯型取りへ|Medit i600を導入しました

※画像は、口腔内スキャナー「Medit i600」を使用した診療のイメージです。当院で実際に撮影した診療風景ではありません。

口腔内スキャナーとは?

口腔内スキャナーとは、小型カメラのような機器をお口の中に入れ、歯や歯ぐき、噛み合わせの状態を立体的な3Dデータとして読み取る装置です。

従来、詰め物や被せ物を製作するときには、トレーに粘土のような印象材を盛り、お口の中で固まるまで待つ「歯型取り」が一般的でした。

口腔内スキャナーでは、スキャナーの先端を歯に沿って動かしながら撮影し、画面上に歯並びや噛み合わせを立体的に再現します。そのため、治療内容やお口の状態によっては、従来の印象材を使わずに歯型のデータを取得できます。

なお、口腔内スキャナーは光を使って歯の形を読み取る機器であり、レントゲン撮影ではありません。スキャンによる放射線被ばくはありません。

口腔内スキャナーは歯科治療にどう役立つ?

口腔内スキャナーで取得した3Dデータは、主に次のような場面で活用できます。
・詰め物・被せ物を製作するための歯型取り
・上下の歯の噛み合わせの記録
・歯並びやお口の状態の確認
・歯列矯正の診断や治療計画
・インプラント治療における補綴物の設計
・マウスピースや各種装置の製作
・歯科技工所とのデータ連携

従来の歯型は、採取した印象から石こう模型を製作する必要がありました。デジタルスキャンでは、取得したデータを歯科技工所などへ直接送ることができます。

また、読み取りが不足している部分があれば、その場で確認し、必要な箇所だけを再度スキャンできます。印象材の変形や石こう模型の製作といった工程が減ることも、デジタル化の特徴です。

患者様にとって何が変わる?

歯型取りの不快感を軽減できます

従来の歯型取りでは、印象材がお口の中に広がるため、「息苦しい」「気持ち悪い」「オエッとなってしまう」と感じる方がいらっしゃいました。

口腔内スキャナーでは、カメラを少しずつ動かして歯を読み取るため、印象材をお口いっぱいに入れる必要がありません。特に嘔吐反射が起こりやすい方にとって、負担の軽減が期待できます。

研究でも、従来の印象採得と比較して、口腔内スキャンのほうが快適だと評価する患者さんが多い傾向が報告されています。

患者様にとって何が変わる?

※画像は、歯型取りでの診療のイメージです。当院で実際に撮影した診療風景ではありません。

自分の歯を立体画像で確認できます

スキャンした歯は、画面上にカラーの3D画像として表示されます。

普段は見えにくい奥歯や歯の裏側、歯並び、噛み合わせなどを患者様にも確認していただけるため、「どの歯を治療するのか」「現在どのような状態なのか」を理解しやすくなります。

必要な部分だけ撮り直せます

従来の歯型取りでは、一部が正しく採れていなかった場合、印象材を使って最初から取り直すことがありました。

口腔内スキャナーでは、不足している部分を画面上で確認し、その部分だけを追加で読み取ることができます。患者様の負担を抑えながら、必要なデータを整えられます。

治療工程の効率化が期待できます

スキャンしたデータはデジタルで保存・送信できるため、歯科技工所との連携がスムーズになります。

ただし、口腔内スキャナーを使用したからといって、すべての治療が1日で終わるわけではありません。虫歯や歯周病の状態、製作する詰め物・被せ物の種類によっては、これまでと同様に複数回の通院が必要です。

「治療期間そのものが必ず短くなる」というよりも、歯型取りやデータ確認、歯科技工所との連携といった治療工程の効率化が期待できる機器とお考えください。

当院が導入した「Medit i600」の特徴

井上歯科クリニック学芸大では、Meditの口腔内スキャナー「i600」を導入しました。

i600は、スキャナーチップを含めた重量が約245gと比較的軽量で、カラーによる3Dスキャンに対応しています。メーカー公表値では、歯列全体のスキャン時間は約50秒とされていますが、実際の所要時間はお口の状態や撮影範囲、術者の操作などによって異なります。

Medit i600の主な特徴は次のとおりです。
・歯や歯ぐき、噛み合わせをカラーの3Dデータで記録できる
・比較的軽量で、お口の中で操作しやすい
・読み取り結果をその場で確認できる
・不足した部分だけを追加でスキャンできる
・データをデジタルで保存・管理できる
・歯科技工所へデータを速やかに共有できる
・詰め物・被せ物、歯列矯正、インプラントなど幅広い治療に活用できる

実際にどの治療で使用するかは、お口の状態や製作物の種類を確認したうえで歯科医師が判断します。

口腔内スキャナーのメリット

患者様にとっての主なメリットは、次のとおりです。

印象材による歯型取りの負担を抑えられる

粘土のような材料を長時間お口に入れる必要がないため、不快感や嘔吐反射の軽減が期待できます。

その場でデータを確認できる

読み取り不足や不鮮明な部分があっても、画面上で確認し、必要な箇所だけを再スキャンできます。

お口の状態を理解しやすい

立体画像を患者様と一緒に確認できるため、治療内容を視覚的にご説明できます。

データの変形や劣化が起こりにくい

デジタルデータには、印象材や石こう模型のような保管中の変形・破損がありません。過去のデータを保存し、必要に応じて比較することもできます。

歯科技工所との連携がスムーズになる

データをオンラインで共有できるため、詰め物や被せ物の製作工程を効率化できます。

口腔内スキャナーのデメリット・注意点

口腔内スキャナーは便利な機器ですが、どのような場合にも万能というわけではありません。

お口を開けている必要があります

印象材を固める時間はありませんが、スキャン中は一定時間お口を開けていただく必要があります。お口が開きにくい方や奥歯まで器具を入れにくい方では、撮影に時間がかかることがあります。

唾液や出血の影響を受けることがあります

歯の周囲に唾液や血液が多い場合や、歯ぐきより深い位置まで正確に読み取る必要がある場合は、スキャンが難しくなることがあります。

従来の歯型取りが適している症例もあります

入れ歯の歯型取り、広範囲のインプラント治療、動きやすい粘膜の記録などでは、従来の印象材を使った方法が適している場合があります。

治療する範囲や目的に応じて、デジタルと従来法を適切に使い分けることが重要です。

機器だけで治療の質が決まるわけではありません

スキャナーの性能に加えて、歯の削り方、唾液や出血の管理、スキャン操作、歯科技工所との連携、噛み合わせの調整なども治療結果に関係します。

口腔内スキャナーに関するよくあるご質問

Q1.スキャンは痛いですか?

基本的に、スキャンそのものに痛みはありません。

小型カメラの先端をお口の中で動かすため、頬や舌に触れたり、お口を開けていただいたりする必要はあります。痛みや強い違和感がある場合は、遠慮なくスタッフへお伝えください。

Q2.嘔吐反射が強くても受けられますか?

従来の印象材をお口いっぱいに入れないため、嘔吐反射が起こりやすい方にも受けていただきやすい方法です。

ただし、スキャナーを奥歯付近まで入れる必要があるため、嘔吐反射が完全に起こらないとは限りません。状態を確認しながら、休憩をはさんで進めることもできます。

Q3.放射線や被ばくの心配はありませんか?

口腔内スキャナーは、光学カメラで歯の表面形状を読み取る機器です。レントゲンやCTとは異なり、スキャンによる放射線被ばくはありません。

ただし、虫歯や歯根、顎の骨などを診断するため、別途レントゲン撮影が必要になることはあります。

Q4.今後はすべての歯型取りがスキャナーになりますか?

すべての治療で口腔内スキャナーを使用するわけではありません。

お口の状態、治療する範囲、製作する詰め物・被せ物や入れ歯の種類によっては、従来の歯型取りのほうが適している場合があります。当院では、それぞれの方法の特徴を踏まえ、患者様に適した方法を選択します。

患者様にとって、より良い歯科治療をご提供するために

口腔内スキャナーは、単に「新しい機械を導入した」というだけのものではありません。

歯型取りの不快感をできるだけ軽減すること、お口の状態を患者様にも分かりやすくお伝えすること、必要な情報を正確に記録し、歯科技工所と円滑に共有することなど、診療のさまざまな場面で役立つ機器です。

一方で、口腔内スキャナーがすべての治療に適しているわけではありません。井上歯科クリニック学芸大では、デジタル技術の利点を生かしながら、必要に応じて従来の方法も使い分け、一人ひとりのお口の状態に適した治療をご提案します。

これからも、新しい機器を導入すること自体を目的とするのではなく、患者様の負担を抑え、分かりやすく、より良い歯科治療をご提供するために活用してまいります。