歯周組織再生療法とは?

日本人の成人の約8割がかかっているといわれ、日本人が歯を失う一番の原因である歯周病。歯周病とは、歯の表面に付着したプラーク(歯垢、細菌の塊)によって歯肉が腫れたり、出血したり、 歯の周りの骨が溶けたりして歯が抜けてしまう病気です。

その歯周病の新たな治療として注目されているのが「歯周組織再生療法」。歯周病の治療は、溶けた骨の位置で進行を止める切除療法が一般的です。しかし、切除療法では歯がむき出す部分が多くなり、知覚過敏が起きやすいなどのデメリットがあります。

それに対し、歯周組織再生療法は、歯周組織の再生を促して溶けた骨を少しでも元の状態に戻そうと開発された方法です。

歯周病の新しい治療～エムドゲイン療法～

歯周組織再生療法のひとつであるエムドゲイン療法は、エムドゲイン®ゲル（emdogain®gel）という、スウェーデンのビオラ社が開発した歯周組織再生誘導材料を使用する歯周病の新しい治療方法です。

エムドゲイン®ゲルは、ブタの歯胚より抽出粗精製された製剤で、エナメルタンパク、成長因子などを成分として含みます。エルドメイン療法は、このエムドゲイン®ゲルを歯周外科手術の際に塗布することにより、歯周組織の再生を促し、失われた骨の回復を期待する治療方法です。

エムドゲイン療法で歯周組織の再生を行うと歯茎も正常な状態になり、歯周病の影響で長く見えてしまう歯の審美性も回復させることができます。

エムドゲイン療法の手順

①麻酔をかけ、歯肉を切開、剥離しますと歯根が露出します。
②器具、薬品(EDTA),レーザーを使って歯根表面を徹底的に清掃します。
③エムドゲイン®ゲルを塗布し、縫合します。
※骨欠損が多い場合はBio-Oss(骨補填材)を併用します。

★イラスト説明
局所麻酔
切開
軟部組織の剥離
歯根面の徹底清掃(肉芽組織の除去、スケーリング、ルートプレーニングなど)
必要に応じてエッチング処理(リン酸、クエン酸など)
清掃した歯根面へのエムドゲイン®ゲルの塗布(血液、唾液の汚染のない状態で行う)
縫合
抜糸(手術日から2週間後ぐらい)

エムドゲイン療法の安全性

エムドゲイン療法は2002年に厚生労働省の認可を受けています。約40か国で20年以上、200万人以上の患者に対する治療実績があり、副作用の報告も少なく、高い安全性が実証されている歯周病の治療方法です

エムドゲインの適応性

エムドゲイン療法は、どんな歯周病にも適応する治療方法ではありません。
全体的な歯周病ではなく垂直的な骨の欠損に有効です。

具体的には、歯周ポケット6㎜以上、骨欠損4㎜以上、垂直性欠損根分岐部病変2度まで。
エムドゲイン療法の適用可能な症例かどうかは、レントゲン(CT)を撮り、判断します。

エムドゲイン療法の術後

エムドゲイン療法による歯周組織の再生には、8か月～数年かかる場合があります。 術後のケア次第で再生治療が成功するかどうかが左右されるので、エムドゲイン療法の術後はとても重要です。

エムドゲイン療法の術後は手術部位を清潔に保ち、刺激を与えないようにする必要があるため、4週間程度は歯ブラシを当てず、うがい薬(コンクールなど)を使用します。

また歯間ブラシなども2か月ほど使用してはいけません。そのため、術後の一か月は週に1～3回ほど来院していただき、医院での消毒および清掃が必要になります。

また、喫煙は血行不良を招き、治癒が遅れるだけでなく治療の効果が薄れてしまうのでできる限り禁煙することが大切です。また、治療部位を安静にしたいので、その部位で咬むのは控えるようにします。

まとめ

エムドゲイン療法は適応症例が限られ、行ったすべての治療が成功するわけではありません。しかし、安易に抜歯してしまう前に、一度は検討したほうがよい治療法だと思います。治療が成功すれば、抜歯してインプラントにするよりも はるかに治療費を抑えられるというメリットもあります。

なにより、天然歯に勝る治療はありません。エムドゲイン療法は安全性も高く、治療後の仕上がりもよいと考えられます。歯周病による抜歯の前にぜひ検討してほしい治療方法のひとつですので、歯周病でお悩みの場合はお気軽にご相談ください。